舞台の奥に広がる物語 マエストロが語る《シルヴァーノ》の魅力
マエストロが語る《シルヴァーノ》の魅力
みなさん、こんにちは。指揮者の中井章徳です。ここでご紹介するのは、ピエトロ・マスカーニという作曲家と、歌劇《シルヴァーノ》という、知る人ぞ知る珠玉のオペラ作品です。
マスカーニといえば、あの《カヴァレリア・ルスティカーナ》を真っ先に思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、《シルヴァーノ》には、それとはまた異なる、繊細で詩的な音楽世界が広がっています。
1895年3月25日、ミラノ・スカラ座で初演されたこの作品は、当時の聴衆が求めた激情的・劇的なスタイルとは異なり、より抒情的で内省的な趣を湛えた作風でした。そのため時代の主流とすれ違い、長らく顧みられることなく、音楽史の片隅に埋もれてしまったのです。
私がこの作品と出会ったのは、2023年のこと。マスカーニの生誕160周年の節目に、彼の生誕地・イタリアのリヴォルノにあるゴルドーニ劇場で上演された《シルヴァーノ》の舞台を目の当たりにし、その音楽の美しさに衝撃を受けました。以来、幾度となくスコアを読み返し、この作品に新たな命を吹き込む準備を進めてきました。
そして、初演から130年余を経た今年、神々のふるさと・出雲の地で、日本初演という形でこの作品が蘇ります。静かに眠っていた旋律が、今まさに再び息を吹き返す――その瞬間に、ぜひお立ち会いください。
※読み進めていくと、「おまけコーナー」もあります!